とある恋人たちの日常。

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「うぅ……寒い!」
「もう四月に入ったのに肌寒いですねぇ」
 
 そう言うと、暖を取るためと彼が私の手を取って自分のポケットにしまう。
 自然と視線が合い、ふふっと笑いあってしまった。
 
 そんな今日は仕事が休みだからとのんびりとお散歩デート。
 
 普段の仕事に追われることが多いし、二人とも土日休みって訳でもないから、休日が被った日くらいゆっくりとデートしたい……のです。
 
 それなのに、まだ春は来てくれなくて。
 吹きゆく風は冷たいまま。
 
 ほんの少し前までは気温が高かったから、私たちも風邪をひきそうだし、桜も季節を間違えちゃいそう。
 
 ひとつ、また風が通り過ぎる。
 揺れる枝にはまだピンクにもなっていない豆のような蕾が沢山。
 
「これから暖かくなるから来週には見頃ですかね?」
「なら、また来週も散歩に来ようか」
 
 彼の提案はとても素敵で、私の心を暖かくさせてくれる。
 
「行きたいです!!」
「じゃあ、また休みを確認しよう」
 
 手を離せばスマホでふたりともスケジュールを確認できるのに、彼は手を離す気は無いみたいでまた私は笑ってしまった。
 
「今度は桜、咲いていると良いねぇ」
「はい!!」
 
 来週はふたりで桜吹雪が見られたら、嬉しいな。
 
 そう思いながら、彼の手を握り返した。
 
 
 
おわり
 
 
 
三二三、桜

4/4/2025, 12:06:41 PM