怖がり屋さんだね。
私は君を抱き締めて、
ぽんぽんとやさしく背中を撫でながら、
子どものように泣きじゃくる君をあやす。
君は、こわい夢を見たと言う。
私がいなくなってしまう世界。
私がいない世界。
誰に聞いても皆、私はいなくなったと言うんだと。
「大丈夫だよ。」「私はここにいる。」
「私は君を置いて何処にも行きはしない。」
私はただ君を強く抱き締めて、涙を拭い、
そう繰り返す事しか出来ない。
…こちらの世界の方が夢だなんて言ったら、
君はどうなってしまうのだろう。
絶対に言えない。
何故、この夢の中でだけ、
また君に会えるようになったのか。
せっかく一緒に居られるのに、
どうして君と笑い合うことが出来ないのか。
…君を置いて行った罰なのかな。
どうしようもない気持ちになり、
私まで泣きたくなってくる。
「ねぇ、泣かないでよ、--。
私は君の笑った顔が好きなんだ。
だから、君の笑顔が見たいんだ。」
涙を堪えて震える声で、
祈るように君に言葉を掛け続ける。
「…夢の中では一緒に居られなくても、
私はずっと君のそばに居るから。
ずっと、君のことを見ているから。だから。」
他の誰でもない、私の大切な君の毎日を。
幸せに生きて欲しいんだ。
私と、一緒に…。
・・・--そこで目が覚めて、私の現実に帰ってきた。
目元に滲んでいた涙を拭い、身体を起こす。
私は君を置いて行った時、
君は私の事を嫌いになると思った。
嫌われてしまえばいいんだと、思っていた。
なのに。
今の私は、何を恐れている?
いつか君に忘れられてしまうことを。
もう夢の中でも会えなくなってしまうかもしれないことを。
とてもこわいと、思っている。
…怖がりなのは、私の方かも知れないな。
まだ朝の日が登り切らない、
薄暗い部屋で一人、自嘲した。
3/17/2023, 1:38:26 AM