『相合傘』
わ、びっくりした!
突然教室の戸が開くもんだから……全く、ノックくらいしてよね。
……え? まぁ確かにね。自分のクラスの教室の戸をノックするヤツはいないわね。
アタシ、テンパってるのかも。アハハハ、ゴメンゴメン。
それにしても、なんでキミはこんな朝早くに登校してるの?
……なるほど、部活の朝練。野球部、もうすぐ大会だもんね。
アタシ?
決まってるでしょ。今日の日直、アタシなんだ。
ほら、黒板の日付を変えたり、学級日誌を準備したり。朝から面倒だよねぇ。
ま、キミは部活がんばってね。
……え? アタシがどうして黒板に張り付いているかって?
別に。特に理由はないわよ。
アタシの背中が黒板に当たってるって?
……なるほど、制服がチョークの粉まみれになる。確かに。
でも、大丈夫。それくらい、アタシが自分で払うから。
え? キミが払ってくれるって?
あー、大丈夫大丈夫。自分で……
ってうわ!
いきなり手を引っ張ったら……
……あー……
……キミも見ちゃった? その小さな落書き。
全く、誰が描いたのかしらね。勝手にアタシ達の名前を書かないで欲しいわよね!
アタシの声がうわずってる?
そ、そうかな? いいから、キミは早く部活行きなってば!
6/19/2023, 1:54:43 PM