朝起きたら妻が用意してくれた朝食を食べて会社に向かう。その際に行ってきますという声かけと、今日は何時頃に帰るからという予定を告げることを忘れない。
昼はこれまた妻が朝早くに起きて作ってくれた愛妻弁当に舌鼓を打ちながら、俺の好きな卵焼きと唐揚げを入れてくれたことにしみじみと感謝する。
夜は仕事が終わったらなるべく早く帰宅をして、夕飯の準備を妻がしてくれている代わりに、子供たちの面倒をみる。そうして出来上がったご飯を家族みんなで囲みながら、ママの作る料理はいつだって美味しいねと、子供たちと一緒に笑い合う──。
──ああ、あの日にそんな行動ができていたら、今のこの状況はなかったのだろうか。
朝は挨拶もしないで家を出て、急な飲み会が入ったことをうっかり連絡し忘れて帰宅し、妻に空のお弁当箱を渡しながら、今日の卵焼きはいまいちだったねと、余計なことさえ言わなければ、俺はこんなにも家庭で孤立せずに済んだはずなのに。
もしもタイムマシンがあったなら、あの日の自分を殴りたい。
けれどそんなことはできないので、もう何日も口を聞いてくれない妻へ、今日こそはきちんと謝る機会を貰おうと、秘かに会社近くのケーキ屋に寄る。
妻の好きなチーズケーキを家族分頼み、祈るような気持ちで帰路に着いた。
【もしもタイムマシンがあったなら】
7/23/2023, 5:40:28 AM