もうすぐ卒業式の時期だ。
この時期が近づくと思い出す。
可憐な淡い水色が似合うあの子のことを。
『ねぇ、〇〇。』
愛らしい声色が聞こえ、顔をあげる。
そこには、不貞腐れたような顔をした不機嫌な君がいた。
『聞いてよ!さっき、外見てたら鳥さんが、1人だけ仲間はずれにされてたの!酷くない!?』
そんなこと…と心の中で思う。
それと同時に彼女に対する好意があるのも事実だ。
だから、彼女に賛同する。
そうだね。生物は基本、群れないと生きていけないから尚更、可哀想だね。
そう口にすると、彼女は嬉しそうに口角を上げる。
『そうだよね!やっぱ〇〇は分かってるね!』
あぁ。彼女は知らない。僕の行動の8割は、君に好かれるための、偽りのものだということを。
一番かわいそうなのは君だよ。
そう常々思う。
『でね…』
そう彼女が言いかけた時、チャイムが鳴る。
『あっ、もうか…じゃあね!』
そう言い残し自分の席に戻って行った。
チッ。
空気を読んでくれよ。
彼女がいいかけてただろ。
つくづく、この世界は僕に対して好意的ではない。
うんざりするくらいに。
退屈な授業が終わり、帰りの会も終わった。
帰り支度が済んだ彼女が来た。
『一緒に帰ろ〜』
うん。そう返事をして、支度を済ます。
素っ気なく感じるかもしれないが、僕なりの精一杯だ。
いつもと同じ帰り道。
手入れされた君の髪がなびく。
綺麗だ。それしか出ない。
ただ、幸せだった。
この日々が続けばいいと思った。
ふと、彼女が紡ぐ。
『〇〇は勿忘草って知ってる?』
知らない。そう答えた。
彼女は花が好きだったし、特に気に止めなかった。
『そっか…。』
彼女の反応が妙におかしかったのを覚えている。
しかし、その場では特に話さず、いつも通りに別れた。
家に帰ったあともいつも通りだった。
いつも通りに風呂に入り、いつも通りに晩御飯を食べ、
いつも通りに眠る。そして、いつも通りに起き、登校する
一つだけいつも通りではないことがあった。
彼女が学校に来なかった。
風邪をひいたのかと思った。
彼女が来なくなって数日が経った。
先生から告げられた。
彼女が行方不明になったと。
現在、警察のても加わり捜索しているが、
見つかっていないと。
何か知っている人がいたら話して欲しい。
それで先生の話は終わった。
世界は僕を嫌ってる。
頭が真っ白になって、よく覚えていない。
けど、覚えているのは、家に帰って調べたあの花、
勿忘草の花言葉が私を忘れないでということだ。
僕が不登校になってから、いくらか経った頃
彼女が遺体で見つかったとニュースになっていた。
新聞も、テレビも、スマホもその事だ。
怖くて怖くて、目を逸らしたい。
けど、目を閉じると
可憐な淡い水色が似合う君が笑っている。
可哀想なのは君の方だよ。そう聞こえたような気がした
2/2/2026, 2:05:14 PM