エリィ

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死ネタです。
嫌いな方はスルーお願いします。





『君とは付き合えない。ごめんね』
幼馴染の君から私へ渡された最期の手紙には、たった一言こう書かれていた。
とても歪な字で、鉛筆を握るのがやっとの字で。
私は君の、一番にはなれなかった。
その晩、私は布団の中で泣き続けた。

そして訪れたあの日。
たくさんの黒い服の人に囲まれた私は、白い箱の中、花に包まれた君の顔を見た。とても穏やかな顔をしていた。その後のことは覚えていない。
気がついたら、私はいつの間にか自宅に戻っていた。黒いワンピースに黒いパンプス。
なぜ私はこんな格好をしているのか、分からなかった。

三日後、ようやく私は自分がなぜこの服を着ているのかがわかった。そして、君のいない空っぽの世界があることを認めなくてはいけなかった。

その日から、勤務先の上司や同僚が心配をしてくれていたらしいけど、私はただ、大丈夫。と言っていたらしい。
その時のことは、後で聞いて初めて知った。

あれから無我夢中になって仕事に打ち込んで、数ヶ月後。
君のお母さんから、私の手元に手紙がやってきた。

「あなた宛に息子が書いていた手紙を見つけました。中は開けていませんが、きっとあなたに読んで欲しかったのだと思います」
一筆箋に書かれ、涙の跡もある手紙を読みながら、私は同封されていた白い封筒を、震える手で開いた。何度も書き直したのか、ぼろぼろになった便せんに鉛筆で、まだきれいな字の頃に書かれていただろう手紙だった。



大好きな君へ

最期に手紙を書きたくなりました。

君の手を取ることができなかった僕を許してください。

僕はあと少しで君と、必ずお別れすることを知っているから。
そして、この手紙を読む頃には、僕はもうここにはいないでしょう。

僕を好きと言ってくれてありがとう。

それだけで、辛くて苦しい日々も穏やかな気持ちでを過ごすことができました。
君が訪ねてくれたときは、本当に嬉しかったです。
君の顔を見るだけで、僕は元気になれました。

本当は、君と一緒にいたかった。
出来れば、君と一緒に歳を重ねたかった。

いつも嬉しそうに笑っているあなたが大好きです。
だからどうか、僕がいなくても

わらっていてください。

だいすきです。



最後の方はやっと書き上げたような、君の最後の手紙を読んで、私は涙が止めることができなかった。



お題「ごめんね」

5/29/2023, 2:27:07 PM