川瀬 ゆた。

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#だから、一人でいたい。


邪魔な奴は、殺す。

たった、それだけだった。

俺にとって、誰かと一緒にいることは、俺という人格丸ごと否定された気分になるのだから。仕方がない。

多分、人として生きるのが向いていない。

手に握り締めた包丁を、先程殺した男の首に押しつけて、横にスライドするように斬る。すると、ブシュッ、という音を立てて、血が吹き出してきた。

顔に、手に、汚らわしい血がついた。

「悪いのは、お前。俺じゃない。関わろうとしたお前が悪いんだよ。もう、こんなの、懲り懲り……」

涙なのか、男の血なのか、もはや分からない。

ボタボタと流れた赤い液体を眺めながら、フラフラと立ち上がる。
歩く度に、床に散らばった血の海が、波を立てる。
何人殺したか、もう覚えていない。
嫌だと思った瞬間に斬りつけてしまっているから、気づいた時には誰もいない。

そんな人生、誰が望んで選ぶかよ。

生気のない男の目を見て、

「俺に関わるな。二度とな」

と言って、部屋を出る。

胸が苦しい。息ができない。
頭が痛い。体中から汗が吹き出してくる。
足の痙攣が収まらず、部屋の扉の前で座り込んだ。

涙が出てきた。

つらい。

こんなはずじゃなかった。

いつも、俺と関わる人達は、皆死んでいく。
跡形もなく、虚ろな目と死体だけを残して──

『邪魔』と言う度に、
俺の中にある『正義』が声を上げる。

「お前は一人でいい。一人がいいんだ」と。

周りがどう言おうが、俺と関われぱ死ぬ運命。
ならば、俺自身が死ぬか、人と関わらなければいいだけの話。二度と犠牲者を出さないようにする為にも、俺は俺なりの努力をしていかなければならない。

まずは『独り立ち』。
自分の身近なところから整えていく。
そこから自分なりの幸せを見つけていく。

幸せを見つけるために、独りになる。
だから、一人でいたいんだ。



7/31/2022, 10:39:27 AM