《過ぎた日を想う》
しとしとと降る、秋雨の中。
曼珠沙華の朱が姿を消し、入れ替わりに木々の葉が紅く色付き始める。
あれをすればよかった。こちらに進むのが正しかった。
そんな後悔も、たくさんしてきた。
自分の弱さに絶望して、泣いた日もあった。
過ぎ去った記憶が、私の頭の中を不意に黒く染めていく。
だからこそ、感じる。
あなたはいつも、街や村の人々と暖かい会話を交わす。立場なんて関係無しに。
そんなあなたも、闇に魅入られし者との疑いから、私への態度が初めは厳しかった。
帝国の復興の厳しさと政治のしがらみが、あなたをそうさせていた。
あなたは芯が強く優しい人だと知っていたから、私はめげずにあなたを信じた。強いあなたを見習って。
すると、それも徐々に柔らかくなっていって、今は本当に柔らかに微笑んでくれる。
あの時に諦めることなく優しいあなたを信じ続けて、よかった。
あなたが私を信じてると知ってくれて、よかった。
あなたに会えて、本当によかった。
私の隣に立ってくれている赤い髪のあなたに、私は過ぎた日を想いながら感謝をした。
10/7/2024, 7:34:35 AM