信号
青は進め、黄色は注意、なら赤色は───?
本当の事を言うと、女は道具でしかなかった。華々しく飾って、置いておいて、勝手に金を持った男がやってくる。そうやって金が寄ってくる仕組みを作るための、絶好の人形。
姉を除けば、そうだ。俺の愛せる世界は、姉が死んだ瞬間に無くなってしまった。世界は一気に色を失って、白か、黒かだけ。復讐を誓って算段を立てた。あの日の血飛沫だけは色が付いていた。
それが本当に最後になってしまったらしい。そこからはもう、増えた傘下の後始末、後始末、後始末、後始末後始末後始末後始末後始末後始末後始末後始末後始末後始末後始末後始末後始末後始末後始末後始末後始末後始末後始末後始末後始末後始末後始末後始末後始末後始末後始末後始末後始末後始末後始末……。もう飽き飽きして、どうでも良くなってきて、仲間とつるんでドンパチやってたとき、アンタが現れた。
派手なジャケットを羽織った、絶妙にダサい立ち姿で、姉のいた家にズケズケ入り込んで行った。そいつ自身の意思って感じはどうもしなくて、話してみると下請け。
きっと、俺が世界で一番憎んでいるやつが上にいると悟ってから、俺はそいつを囲いこむようになった。そいつにしかできない事がどうやらあるっていうから囲いこんだ。そんなはずだった。
『なあ、辞めろよこんな事』
口から魂が、抜けると思った。ああ、お前までそんなことを言うのかという呆れが半分。もう半分はこの期に及んでまで俺に干渉してくることがうざったい。裏を返せば、嬉しかった。
今まで散々やってきたことを自首した。
これからは、信号も読めるようになるかな。
『赤は止まれ』
9/6/2025, 2:22:32 AM