たやは

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神様が舞い降りてきて、こう言った

「あーあ。いいなぁ~」

ここは神様が住まわれている世界。
神様はここで、人間界の秩序を守るために仕事をしながら暮らしている。

「か、神様〜! 神様はどちらにいらっしゃる。お前たちが着いていながら行方が分からないとはどういうことだ。」

神様はいつものように昼すぎに私室に戻り休憩を取っていたが、時間になっても姿を見せないため、従事の一人が様子を見に行ったが部屋はもぬけの殻だった。
慌てた従事が従事長に報告、従事長が騒ぎだし神様が行方不明だと大騒ぎとなった。

その頃、神様は人間界を覗いていた。なぜ覗いていたかと言えば、人間界から笛や太鼓、人間たちの声が聞こえたからだ。

祭りだ。

祭りと言っても盆踊りに縁日、七夕、お囃子やお神輿、夏祭りに秋の豊作祈願祭など、数え切れないほどあるが、神様が見ていたのは、小さな村の稚児舞。
稚児舞は、神事の場で演じられる踊りで5才から7才くらいの子供たちが伝統を引き継いでいく。
神様は子供たちが自分に奉納するために毎日、毎日一生懸命に練習していることを知っていた。
そして今日は子供の晴れの舞台だ。
あんなに練習していたのだから大丈夫、必ずやり遂げられると神様は信じていた。
そう、今日は仕事などしている場合ではない。あの子供たちの成果を見届けなければならない。

上手い! 上手い! そうだ。そうだ!

神様は身を乗り出し神事を見ているうちに人間界に降りて来てしまった。近くで見る稚児舞は子供たちの熱気に溢れ、見ごたえもあったしお囃子に合わせて踊る姿は皆が立派な舞踊家のようだった。

「あーあ。いいなぁ~。みんな上手く踊れているじぁないか」

稚児舞を見終えて戻ってくれば、従事長からさんざん怒られたが、「来年も見に行ってみようかな」と神様は今日見た稚児舞に心を寄せていた。

きっと来年も神様は人間界を覗き見しているはず。


7/27/2024, 11:59:41 AM