一夜の夢

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雪を待つ。
つけた足跡を消してくれるほどの吹雪を。
君の重さの分だけ沈む私の足跡は、誰にも知られずにかき消える。

さく、さく、と雪を踏み締める音だけがする。
ようやくこの身ひとつになれた。
財産も、蔵書も、食器も服にも、執着などない。
人生のスパイスは君だけで良いとわかったから。


「僕の歴史は二つに分けられる。あなたに出会う以前と、後に」

そう言った君との再会を思い出すと、いまだに自然と口角が上がる。
きっとこの先一生、あの日を忘れないだろう。

私は雪を待つ。
私のようには全てを捨てられないほどにしがらみに囚われた君を、このまま連れ去るために。

12/15/2023, 1:33:00 PM