宿の外が騒がしい
依頼を終えてやっと休めると思い
ベッドに身を沈め
意識を手放そうとした時のことだ
妹はどこでもすぐ眠ってしまう体質のため
もう既に隣から寝息が聞こえている
そして外も騒がしい
脇に置いていた杖を手に取り
ベッドから降りて、窓から外を見ると
5人くらいの男女に向かって
街の住民たちが歓声を送っている様子が目に入る
この街に訪れて何日か経ったとある日に
勇者一行の話を耳にしたような気がする
「……魔族の王倒しに行ったって話だったか?」
独り言を呟く兄は
城のある方へと顔を向ける
この歓声から察するに
無事に倒すことが出来たってことだろう
大体は後日ここの王から
この一行に報酬が与えられるはずだ
自分たちには関係ないがと
ため息をついて再びベッドへと
身を沈めたのだった
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次の日の朝
しっかり眠ったおかげで
兄妹はスッキリした目覚めで宿を後にする
もう少し手持ちを増やすために
新たな依頼を受けに行こうとしていたところで
広間の方から昨日宿から見た
勇者一行の姿があることに気付く
「王女が勇者と婚約するんだって!早く行ってみよ!!」
隣をかけていく子供たちの後ろ姿を見ては
妹が兄顔を向ける
「―すごいね、勇者って。けど、旅してるのに婚約とかあるの?」
「長い間ここに居て…傍に居ることが多かったのなら、そういう関係になっていてもおかしくは無いのかもな」
「ふーん」
広間の方は
2人の瞳にはとても明るい場所に見えていた
何度かこう言った“ハッピーエンド“の場面は
目にしたことがある
だが、何度経験しても
2人は他人事と遠くから眺めているだけなのだ
実際に手を貸したこともあった
それもまた
2人には小さい事でしかない主役は彼らだ
気付かれない内に姿を消し
“ハッピーエンド“は
光の下を歩けない2人には――――
まだ訪れることはない
[ハッピーエンド―「2人きりの旅」より―]
3/29/2024, 4:13:32 PM