27(ツナ)

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行かないでと、願ったのに

なにもない田舎、閉鎖的で薄暗い、楽しい事なんてひとつも無い所だった。
でも唯一、先輩だけは明るくてかっこよくて一緒にいる時間が凄く楽しかった。
そんな日々を守りたくて、私は毎日のように神社にお参りしていた。
「先輩がどこにも行かんように。この幸せがずっと続きますように。」

ある日の夕方、村の大人たちが何故か騒がしくて私は外に出た。「どーしたん?何かあった?」
よく見ると警察や救急車まで来ていて物々しい雰囲気に余計に不安が募る。
「あぁ、なんかそこん踏切で事故が。男子高校生が踏切ん中入ったか男ん子助けて、犠牲になったみたいやんな。」
近所の爺ちゃんも心配そうに遠くから事故現場を覗いていた。
私はなんだか凄く嫌な予感がして気づいたら事故現場の方に走り出していた。
「あ、こら!危なかけん、行ったらあかん!」
叫ぶ声を無視して、過呼吸になりながら全力で走った。

現場に到着して、すぐに警官に制止されたが腕の隙間から線路の方を見ると、スクールバッグが落ちていた。そこには私が先輩にプレゼントしたお揃いの手作りのお守りが付いていた。
「────ッ。」
声が出せない。体も動かなくて、目の前が真っ暗になって、その場に崩れ落ちた。

どこにも行かないでって、幸せが続くようにって、お願いしたのに。


11/3/2025, 11:12:08 AM