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11/2「眠りにつく前に」

 眠りにつく前に、一杯のコーヒーを飲む。シェアハウスをしていた頃の友人からうつった習慣だ。
 普通カフェインを摂ると眠れなくなるものだが、日頃飲んでいると飲まない時に異様に眠くなる、だからいざ眠りたい時に飲まずにいればぐっすりと眠れるのだという。
 今夜は寝る前のコーヒーを始めてから初めて、飲まずに寝ることにした。ちょっと仕事で色々あったから。
 布団に横たわると、ケンカ別れした元ルームメイトの顔が浮かんだ。
 アイツ、どうしてるかな。

(所要時間:7分)



11/1「永遠に」

「よろしいのですか? 奥方様をこのような…」
「ああ、大丈夫だよ。彼女は今、とても幸せな夢を見ているはずだ」
 唇に微笑みを浮かべた妻の寝顔は美しく、僕が愛を囁やけばそっと目を覚まし、薄目を開けて優しく名を呼んでくれるだろう。
「さあ、始めてくれ」
 魔術師に合図する。彼が魔法を唱えると、妻はゆっくりと息を吐いて、眠りの深くへと落ちて行った。
「…終わりました」
「ありがとう。これで彼女は決して、僕以外を想うことはない」
 永久に続く眠りについた妻に口づける。
 僕は君を愛しているよ。そして君は僕を愛している。永遠に。

(所要時間:7分)



10/31「理想郷」

 そこは争いもなく、飢えもなく、人々が脅かされることのない土地。
 常に程よく暖かく、食料は豊富にあり、額に汗して働く必要もない。
 人々は丸々と肥え太りましたが、病気をすることもありません。彼らがころころと転がって移動したことから、そこはころころの国と呼ばれました。
「…なんて出だしはどう?」
「オチが知りたい」
「そこは本職の絵本作家が考えることでしょ」
「丸投げされた」
「でも理想郷ってさ、そんなもんだと思うんだよね」
「どうかな。住めば都って言うし、案外どこにでもあるものなのかもよ?」
 少なくとも、好きな仕事に頭を悩ませるのは嫌いじゃない。

(所要時間:9分)

11/3/2023, 4:31:34 AM