水と炭素と塩分と、それから色々沢山の素材。
それがあれば人間を作れるとは何処かのお伽噺だったか。
人工知能、AI、バーチャル体、画面向こうでも良ければ。
写真、絵画、動画。石像、人形、ヒトガタ。
どうにもこうにも届かない。
<君に会いたくて>
清廉潔白と呼ばれた人だった。
恋人を失い酷い悲嘆に暮れながら、それでも日常に復帰した強い人だった。
素晴らしい人、だったのだ。
「何……で……」
目が覚めた暗い部屋、四肢を固定する固いベット。
いくつも床に落ちた黒髪の塊。
無造作に投げたされた青白い肌。
鉄臭く淀んだ空間。
写真に手を合わせる背中が、一周回って異常なほど。
「やっぱり足りなかったか。」
見下ろす目は冷たく、光無く、感情もなく。
がらがらと酷い音を立てたカートの中身はおぞましく言葉に出来ない。
「あまり暴れないでね、麻酔が切れてしまうよ」
「一体、」
「君が言ったんだろ、手伝えるならって」
俺じゃ上手く出来ないから。
貼り付いていた薄い微笑みすら、浮かべること無く。
「彼女が喜ぶと思うのか!」
「うるさいな、彼女の好物も知らない癖に」
黒髪の美しい女性が笑う写真の前。
椀に積まれた白い玉。
床に転がるいくつもの頭部、
落ち窪んだ二つの穴。
「カニバリストと同じ地獄に行く方法、他にあるなら教えてくれよ」
1/20/2024, 6:50:31 AM