たやは

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friends

友達なんて1人もいない。教室にも、塾にも、部活にもどこにもいない。進学校だからなのかなぁ。みんながライバルみたいに競って勉強している。
私は、学校でも完全に浮いている。

だから、わたしの友達は雨のなかに佇むあの子だけ。
雨の日にだけ会いに来てくれるあの子は、そっと私に寄り添ってくれる。ただそれだけ。でも、私にとっては大切な友達だ。

あの子の顔を見たことはない。だって、いつも隣に立っているから、顔を合わせることはない。

あの子の声を聞いたこともない。だって、いつも私の話しを聞いてくれるから、あの子は黙って頷くから、声を出さない。

でも、確かにいるの。手を繋いたことならあるわ。冷たい手だった。
あの子だけが友達だから、誰にもあの子のことは言わない。

でも、あの子のことを妖怪だという大人がやってきた。やめて。あの子を払わないで。あの子は何もしないわ。私の友達なのよ。
いくら叫んでも「もう大丈夫たから。怖かったね」って大人は言う。
違う。怖いなんて思ったとない。あなたたちの方がよっぽど怖いわ。
あの子を、私の友達を帰して。

雨が降ってもあの子は来なくなった。払われてしまったのだろうか。
悲しい。
寂しい。
1人になってしまった。

ピンポーン。

「はーい。どちら様。まあ、お隣に。そうですか。ちょっと待っていてね。」

母が私を呼ぶ声が聞こえ、2階の部屋から玄関先まで降りてきた。

「お隣に引っ越してきたそうよ。娘さん、あなたと同級生ですって。あいさつしなさい。」

母に促されて玄関であいさつをした時、同級生とななる子の顔を見た。
雨のあの子だ。
顔を見たことはないけれど、私には分かる。絶対にあの子だ。
あの子も優しく微笑む。
やっぱりあの子は妖怪ではなかった。だって払われてないもの。目の前にいるもの。

でもあの子は言った。
「あたしは生まれ変わったのだと。あなたを1人にできないと思ったら、生まれ変わっていた」らしい。
そんなことあるのかな。それでも嬉しい。私の新しい、ううん。古い友達ができた。
明日からは、楽しい学校生活が待っている。



10/20/2025, 10:47:39 AM