刹那
分からなかった。
眼前の光景が、雪原の色が。
私は目を離していなかった、ただ瞬いただけだった。
心臓の音が早まっていき、段々と痛くなっていく。
名前を呼ぼうとして、ふとコイツの名前を知らないことに気がつき、口から心臓が出るような錯覚を覚えた。
「おい新入り。 こいつみたくなりたくないなら、頭を下げろ」
ハッとなって地面にぺたりと這いつくばった。
鉄みたいな匂いが鼻腔をツンと刺す。
視界が白で乱反射し、雪すら見えなかった。
すすり泣きながら理解してしまったのだ。
瞬いた刹那に、私は戦友を喪った。
4/28/2024, 5:35:58 PM