夏だ。
アスファルトに反射した太陽の光が、熱を放出して、その上でミミズが干からびている。
蝉が鳴いている。
夏だ。
靴の頭を目的地に向ける。
日光に熱されて爽やかさを失った熱風が顔に吹き付ける。
私たちは今から山に向かうのだった。
山の地中に埋まっているはずの、あの子を探しに。
あの、蝉が鳴きじゃくる山の上に向かうのだった。
夏だ。
日差しがぎらぎらと照らし続けている。
白い雲が遠くに見える。
蒸し暑い。
あの子は、突然姿を消した。
ちょうど今日みたいな夏だった。
あの日、あの子はどこへ行くと云っていたのだっけ?
ともかく、あの子は出かけて、私たちは、クーラーの効いた部屋で、あの子もすっかり大きくなった、とお互いに語り合った。
夏だった。
蝉の鳴き声が大きくなる。
日差しを、木々の葉が覆い始めた。
蒸し暑い。
水気を含んだ熱い空気が揺らぐ。
山を登る。
天辺まで行けば、涼しいだろうか。
今より。
あの子が消えたあの夏の日より。
そんな考えを、浮いてきた顔の汗と一緒に拭う。
夏だった。
蝉が鳴いている。
蒸し暑い。
7/14/2025, 10:31:07 PM