お題《泣かないよ》大輪の華火が咲いた夏の夜。土手で向かい合い、告げられた、言葉。華火の音と共に記憶から消えてしまった。最後見た彼の顔は泣いていないのに、泣いていた。何か言わなくてはと思うのに、浮かぶ言葉もない。ただただ、鮮やかに虹色の華火が夜空を染めあげる。周囲の騒音が掻き消えた世界で、私は色を失い――堕ちていく。深い深い夜の底へ、沈んでゆく。
3/17/2023, 11:04:19 AM