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『日の出』

 山の端、あるいは水平線に向けて、空の明度は徐々に上がっていく。濃紺が群青、天色になって淡青へ。青が白に変わる過程のなんと美しいことか。
 空の際は薄らと陽の色に染まっている。黄とも橙とも取れぬ、あるいは桃色にも見える絶妙な彩は、空の青と混じり合って雲を淡く色付けている。
 「春はあけぼの」から始まる一章節を口の中で転がす。一千年も昔の表現に、人の世の唯一の不変を見た。著者の豊かな感受性と高い表現力は、千年の時を超えてなお色褪せない。
 青が明けてゆく。陽の色が強くなってゆく。一瞬の閃光が辺りを染め上げる。命の星が姿を現すその瞬間に、私は世界の美しさを知るのだ。

1/3/2024, 4:41:02 PM