あのね。
私、ちゃんと覚えているよ。
春、桜並木を眺めながら一緒に歩いたよね。
夏、一面の向日葵畑がとても綺麗だったなあ。
秋、赤く染った紅葉の山々が眩しく思えたっけ。
冬、プレゼントしてくれたシクラメンが日々の癒しだった。
植物が好きって言ったから。
貴方はどんな季節でも美しい草花を見せてくれた。
私、ちゃんと覚えているよ。
あのね。
どんな生命も、いつかは散ってしまうの。
何も言わずに、ひっそりと枯れてしまうの。
だから貴方は何も苦しまなくていい。
貴方は私が通る道をたくさんの花束で飾ってくれた。
充分過ぎるほど、貴方から餞を貰っていたんだよ。
あのね。
私、幸せだったよ。
貴方のお陰で、本当に幸せだったの。
だから、お願いだから。
そんな顔をしないで。
――――墓の前。菊と、貴方の姿。
『伝えたい』
2/12/2026, 1:03:57 PM