私は街が嫌いだった。
ネオンを着飾り激しく点滅する歓楽街に身を侵されてしまった私は、ゆるゆると過去のことを思い起こす。
田舎生まれということに対するコンプレックスゆえの反骨心だったのかもしれないけれど、私は街に行くが嫌いだった。お母さんがやけに厚い化粧で、一張羅を着ていることに耐えられなかった。お母さんが、行くよっと声をかけても押し入れの中に閉じこもったままで返事もしなかった。結局半べそで引きずられながら外出したのだ。
それが今となってはこのザマ。もうどっぷりだった。
羽振りのいいオジさんの腕にしがみついて嫌らしい色調のランプで照らされたベッドに沈み込む。彼が私の首にごつごつした手を当ててゆっくりと締め付けてゆく。呼吸ができなくなる。視界がぼんやりとして、その先の世界が見える。あすこは桃源郷。街はあすこへの入口だったのだ、と私は気づいてしまった。
都会の根本で燻る狂気。魔法みたいに出てくる札束。窒息寸前の快感。私は今日も街に溺れて気持ち良くなる。
私は、此処が好きだ。
1/29/2024, 1:36:56 AM