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2人きりの小部屋、カタカタと秒針だけが響いている。
緊張してる貴方の顔をじっと見つめていると目の奥が熱く痛くなってくる。
目の前に置かれてるものはぼやけて形が何なのかは分からない。
紙、のようにも見えるし箱、のようにも見える。
だけどそれに意識を向ける事は無かった、ただ貴方だけを見つめている。
妙に思考が安定しない、何か突拍子もない事を口走りそうなそんな変な感覚。
手を伸ばせば急に世界が変わってしまうような不安。
貴方の口の動きを見ていても、脳が言葉を理解してくれない。
身体が軽い、ふわふわと飛べそうだなとおかしな事を考えてしまう、何故こんなにも集中出来ないのか。
そんな事すら考えられない、今は目の前の貴方しか見れない。
気付いたらテーブルの上にあったはずのモヤは消えていて秒針の音も別のものに切り替わっていた。
彼の声が鮮明に聞こえ始めた。
あぁ、聞きたい。
聞きたい。

胸糞悪いスマホのアラームがそこで鳴った。
あぁ、今日も聞けなかった。
脳はまだ眠っているのに体も視界もハッキリしているのが苦痛でしかなかった。
今日も君の答えは聞けなかったよ。
もう君の声は聞けないのに、どうして夢の中でまで君は焦らすんだよ。
鼻腔を擽ぐる線香の香りに現実を感じてしまう。
夢が醒めてしまう前に、本当に1度で良いから。
お願いだから、あの日の続きを聞かせてよ。

3/21/2024, 4:59:06 AM