初心者太郎

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—風の郵便—

あの日は、今日の様な秋風が吹いていた。どこか寂しく冷たい風。

一年前。私が小学六年生の時のこと。
父の仕事の都合で転校する事を、まるで風の様に両親から告げられた。

本当は転校なんてしたくなかった。六年間共に過ごした友人達と離れたくはなかった。

けれど私が何を言っても変わらないと分かっていたから、出来るだけ顔には出さない様に振る舞った。

それを告げられてから猶予は一週間あった。だが、私は友人に言えなかった。中学生になっても仲良くしようね、なんて約束をしていたから言い辛かったのだ。

結局私は何も言えずに、故郷を離れた。

私は少し後悔している。最後にほんの一言でも伝えられたら、少しは心が楽になっていたかもしれない。

秋風が頬を撫でる。
友人への想いを風に託した。きっと、秋風が私の気持ちを運んでくれますように、と。

お題:秋風🍂

10/23/2025, 5:03:50 AM