朝日の温もり/
朝日は穏やかそうな顔をして凄まじい。
暗い中に一粒灯る温もりの方が心地よい。
わたしに朝日は少しばかり眩しすぎる。
ある寒い冬の夜のこと。
コンビニでおでんを買ってきたはいいものの
お箸をひとつ、と言うのを忘れたことに気がついた。
あぁ。あそこの店員さんは言わないとくれないんだよなぁ。やってしまった。と小さい後悔をしながら仕方ない、と自分に言い聞かせ袋をガサゴソと漁る。
しかしお箸はきちんとそこにあって
ご丁寧にセロハンテープでとめられていた。
乱雑ではなく、綺麗な切り口で。
まるできちんとリボンがけされたプレゼントみたいに。
わたしは店員さんから
あなたのことをちゃんと気にかけていますよ、
と言われているようで胸が温かくなった。
こんなホタルみたいな温もりが好きだ。
じわりと沁みてくるような。
恩着せがましくなく、受け取りやすい。
そんな温もり。
わたしは誰かにそんな温もりを
与えてあげられるだろうか。
そしてあわよくば少しずつ朝日の温もりも
受け取れるような自分になりたいとも
思ってはいるのだが。
まだまだ先は長そうだ、と今日も
朝日が漏れ出るカーテンを申し訳無さそうに
ゆっくり閉めるわたしなのであった。
岐路/
岐路に立つ瞬間というのは
物凄く真剣な時か
物凄く恥ずかしい時の
どちらかなのでは、と思う。
前者でいえば
会社の命運をわける選択だったり、
結婚をするか否か、だったり、
その後の人生がこの選択で変わってくるかも
というような時、人は真剣に岐路に立っている。
では後者とは。
後者のほうがつらいもので、
運が悪ければ選択肢すら無いことも多い。
例えば電車に乗っているとしよう。
次の駅に止まるにはまだ時間がかかりそうだという時、
急にお腹に激痛が襲ってくる。
そんな時に限って急行だったりもする。
そして君は岐路に立たされる。
このまま次の駅まで我慢するか、いやもう我慢できそうにないほど、濁流のように押し寄せてくるソレはどうすることもできない。冷や汗を拭い、どうするどうする、とめまいをさせながら考えを巡らすが整理できない頭。
選択肢が無い方の岐路に立たされるのは
耐え難い苦痛である。
人間とはおもしろいもので
その耐え難い苦痛を乗り越えた安堵や
達成感というものは、
羞恥を晒さなくて助かった、という
後者の方が一瞬上だったりするのである。
6/9/2024, 11:14:03 PM