全く言うことを聞かない私の体。私の瞳は意思とは反してただ一点を見つめ、止まらぬ心臓を跳ね上がらせる。
私の体は一体どうしてしまったのだろうか。使えなくなった脳みそが止まぬ鼓動に死を錯覚していた。
高校三年生の夏、私はこの先きっと体験できない忘れぬ恋をした。大人になり幼かったあの頃とは変わってしまった今でも突き刺さるような雨が降る日、在り来りで特別な甘いムスクの匂いが私の鼻に香るような気がするのだ。
しっかりと残っている暖かくで残酷な記憶が私の心を蝕む。
時間は私の心を癒さず、彼を綺麗な思い出にする。
私が泣いていても誰も頬を撫でてはくれず、私が寂しいと口にしても誰も私のことを抱きしめてくれない。大人になればなるほどその虚しさが体を包む。
体も心も冷え切る冬、最近になって別れるぐらいなら出会わなければ良かったとちょっぴり思う。お前のせいで寒くてたまらないぞなんて八つ当たりもいい所だ。
私の運命はきっと彼でこれからもずっと変わらない、何処かで彼を忘れることは出来ないのだと思う。
でもきっと彼の運命は私ではなかった。
昔、物語では愛し合うお姫様と王子様は結婚して幸せになることを信じてやまなかった。でも現実はそうじゃない。世界は幼いころ思っていたより単純じゃないことを今はもう知っている。
今年のクリスマス、サンタさんには優しい彼氏をお願いすると強がった私は現実を見ながら夢に浸かり続けている。
9/12/2024, 2:25:54 PM