@grk1365126

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【桜散る】

 窓の外に立つあなたには花びらが降り注いでいて、そのさまがあまりにも出来過ぎていたから、私は夢でも見ているのかな、とゆっくり瞬いた。満開を過ぎた花の向こうには薄ら青い空が広がっていて、あなたを照らす日差しは柔らかく形を変え続けていた。芽吹き始めた緑がこまかに輝いていた。何もかもが巡る季節の中に正しくあった。まるで祝福されたかのように。
 そうでもない、と嘯いたあなたは、慣れたように窓を越えて部屋の中に入ってくる。靴を片手に遠慮なく踏み込む足元に、花びらが落ちた。あなたが纏っていたものは、そうしてしまえばただの花の死体であって、祝福とはなんだろう、と少し考えた。花の彩りのこと。佇むあなたのこと。夢を見ているのかもしれないと思ってしまった、あの景色のこと。
 あるいは、祝福ではないこととはなんだろう、とも考える。花が散ること。あなたがわたしに気付いてしまったこと。あの景色を崩したのはわたしだったのだと、知ってしまったこと。

4/17/2024, 10:57:04 AM