#6 「もう一つの物語」
「もし、あの高校に行かなければ」
「もし、この大学を選ばなかったら」
中学校までは自分はそこそこ頭のいいほうだと思っていた。高校受験はギリギリまで2つの高校で迷っていた。1つは市内No.1かつ県内No.2の学力を誇る県立高校、もう1つは市内No.2のレベルの県立高校だ。前者は、必死に頑張れば受かる可能性がある高校。後者は、母の出身校で、当時の私の学力で確実に受かれるレベルだった。さらに私の親友の第1志望校でもあった。迷いに迷って、私はレベルが高い方の高校を受けた。母からの重い期待に応えたくて。
しかし、結果は不合格。次から次へと涙が零れた。なんで?あんなに頑張ったのに。悔しくて堪らなかった。結局私は、自称進学校の底辺私立高校に通うことになった。もちろん初めのうちは成績が良かった。でも、高校受験がトラウマとなり頑張ることが怖くなってしまった。「必死に勉強して大学受験も失敗したらどうしよう」そんな考え方で勉強することから目を背けるようになった。頑張ることを辞めたらみるみる成績が下がった。当たり前だ。
大学は北海道の国立大学を受験した。様々な理由をつけて頑張ることから逃げていたら大学も落ちた。母には浪人を勧められた。でも、それだけはどうしても避けたかった。現役で頑張れなかった人間が浪人したって頑張れるはずがない。落ちるに決まっている、と思っていたから。
私は私の人生は高校受験で狂ってしまったと思っている。その思いはこれから先も変わることは無いだろう。
「もし、もう1つの高校を受験していたら私の人生は明るいものだったの?」
進学するつもりなんてさらさらなかった滑り止めの大学で、全く興味のない授業を受けながら、私は今日も考える。
10/29/2024, 10:58:38 AM