「伝える、伝えない、伝える、伝えない、伝え
る…」
明日は彼とのお別れの日なのに、まだ決心がつかない私は花占いなんかに頼ったりしている。
「伝えない、伝える、伝えない、伝える。…はぁ」
自分の気持ちに気づいてから一年。それ以前から彼とはまあまあ仲の良い同級生というような距離感だったけれど、意識し始めたらもう大変。朝、おはようって挨拶するだけなのにドキドキするし、5秒以上は目を合わせて話せない、それなのに遠くにいる彼のことは目で追ってしまう。
こんなにわかりやすかったら、私の気持ちがバレるのも時間の問題だ…とヒヤヒヤしながらも、心のどこかではいっそバレて欲しいと思っている節もある。
だって「好きです」だなんて、自分の口から言えない。だから伝えずに、どうにか私の気持ちを彼に察して欲しい。もし答えがイエスならば、彼から告白して欲しい…。
彼がエスパーだったらいいのに、彼がエスパーだったら、この気持ちを自分の口からは伝えずに届けることができるのに…。
そんな妄想をしていたら、携帯が鳴って現実に戻された。
「はい!もしもし!」
「もしもし?なんか妙に元気だな。」
こんなタイミングで彼から電話だなんて、まさか、私の気持ちが届いた…?
「ボーッとしてたら電話が鳴ってびっくりしちゃっ
て。」
「それはごめん、いきなり。今大丈夫?」
「大丈夫だよ!なに?」
「あーあのさ。ま、わざわざ電話で言うことじゃない
んだけどさ…。」
「うん?」
「…いや、ごめん。やっぱり明日、明日言うわ!」
「えっ?」
「ホントごめん。いきなり電話しといて。また、明
日!よろしくな!」
「えっ、ちょっと、え?」
切れてしまった。彼は何を言おうとしていたのか?
もしかして…?もしかしてもしかして…!
私の気持ちは舞い上がった。でも、期待して違う事だったら心底落ち込むだろうから、あんまり期待しないでおこうとは思ったけれど、無意識に上がる口角は抑えきれない。
風が吹いて、地面に散っていた花びらが舞った。まるで明日起こりうる出来事を祝福してくれているようだ。
7/9/2025, 2:00:06 PM