どこへも行かない旅
使い慣れた一眼レフを首から下げ、クロを連れて河原へ向かう。
「旅」といっても、いつもの散歩道の延長。
けれど、レンズを覗くたびに世界は新しく書き換えられていく。
光の粒子が、クロの黒い毛並みに溶けていく。
シャッターを切る瞬間、私は私自身から少しだけ自由になれる気がする。
遠くへ行くことだけが旅ではない。
自分の心の、いちばん静かな場所へ降りていくこと。
それを、銀色の光が教えてくれる。
足元でクロが小さくあくびをした。
現像を待つ時間のように、答えを急がない。
私の心の旅路は、まだ始まったばかりだ。
12/29/2025, 9:05:10 AM