光の回廊
深呼吸をして、自分の激しい鼓動を落ち着かせようと試みる。
しかし、どうやら私はこの暗闇が嫌いらしい。
まるであの時のエレベーターのようだった。逃げ道がなくて、私の人生を一気に狂わせたあのエレベーター。
あの時と同じように、体を縮こませて一生懸命暗闇に溶け込もうとした。そうすれば、父は私のことを守らなくて済んだだろう。
光さえも拒絶して、一生懸命息を吸う。ほんの、ほんの少しずつ。
自分の怯えている声と、あの時の銃声が頭の中にフラッシュバックしてくる。やはり私は、あの悪夢のような日から抜け出せることはできない。
ここかどこかなんて、分からなかった。ただ一つ、エレベーターのような狭さなのは感じた。
すると扉がゆっくりと開き、光の回廊が私を差した。
「御剣、大丈夫か。怖かったよな」
あの時とは違って、聞こえてきたのは悲鳴なんかではなかった。光という存在が、私に手を差し伸べる。
「成歩堂……」
名前を呼ぶと、光はさらに輝きを増して、私の手を取った。
出てみて初めてわかったが、本当にエレベーターに閉じ込められていた。成歩堂曰く、地震とかではなく機械が故障して起こってしまったことらしい。
いつものようにへらへらした笑いで、成歩堂は私を見る。その笑顔が、私を安堵させる。
「なぜ、私がここにいると分かったのだ?」
「んー……そうだな。御剣は、こういうことに巻き込まれやすいだろ?一応心配だから見に行ったら、図星だったってだけだよ」
「ム、……あまり嬉しくないな」
彼は狙っていましたと言わんばかりの表情をして、私の肩を大袈裟に叩く。
「なんだよ御剣、僕に助けられて嬉しいと思ってたのか?」
「ち、ちがう……」
私は今まで、光という存在を見て見ぬふりをして生きていた。
しかし、アイツと法廷で出会った時、光が自ら私の方へと向いたのだ。それは、私が光を求めていた訳ではなく、光が影を求めていたのだ。
その光は今、さらに輝きを増して私の道標となってくれている。彼がいなかったら私の人生はどうなっていただろう。
感謝している。キミの存在が、私の心を動かす。
「御剣〜」
「なんだ」
「今真宵ちゃんから電話来たんだけど、みそラーメン食べたいんだって。来るか?」
「いや、私は」
「言い方を間違えたな。来るよな?」
きっと彼の光は真宵くんなのだろう。彼もまた、誰かによって人生を動かされたのだ。
仕方なく承諾して、仕方なくついて行く。だがしかし、それがいい。それでいいのだ。
「成歩堂」
「なんだよ」
「……私は、醤油の方が好きだ」
「知らないよ……真宵ちゃんに何言われても知らないからな!」
成歩堂は私の肩を押す。バランスが少しだけ崩れて、笑みがこぼれる。
12/22/2025, 1:30:25 PM