そんじゅ

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宮殿は夜に包まれたまま、また新たな朝を迎えた。
召使い達は窓という窓を濃紺の紗で覆って陽射しを城から閉め出し、早起きな小鳥を全て殺して庭園の静寂を守り続けた。

一昨日、王の死と共にこの国の時は止まっている。

王の死の報せは音のない雷のように、静かに、しかしすばやく国中へ広まった。唯一それが届かなかったのは宮殿の奥の奥、そのまた奥にひっそりと扉を閉ざす、王妃の部屋だけだ。

そして三日が過ぎた。

ようやく大臣は王宮の奥へ向かい、王妃に謁見を願い出た。後ろに控えた従者は腰に二本の剣をさしている。
王妃はそれを見て全てを知った。
「王は苦しまずに旅立たれましたか」
「はい。静かな最期であらせられました」
薄暗いままの応接間に二人の声がにじんでそっと消えていった。香炉の薄い煙は開かれない窓の周りでわだかまっている。

「王妃殿下、貴女様の罪は王を一人で旅立たせたこと」
大臣は一度だけ王妃と目を合わせ、続ける。
「そして私の罪はこの報せで妃殿下を悲しませたこと」
従者は静かに剣を抜いて大臣に差し出した。

「王はあちらでお待ちでいらっしゃいます」


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哀愁をそそる

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所感:
旅は道連れ、世は情け無用の政治劇。

11/4/2023, 11:23:31 AM