千明@低浮上

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『私は好きな人の好みのタイプに近づけるように努力するタイプなの』

そう言っていた彼女は、少し前に髪型を茶髪のパーマから自分が前から好きだと言っていた黒髪ロングに変えた。彼女が俺の事が好きらしいと同級生から聞いた時、天にも登る気持ちだった。本当に?そうであったらこんなに嬉しいことはないのに。だが彼女から微塵もその気配が感じられなかった。彼女は最近俺に話しかけることも、目を合わせることすらもしてくれない。彼女が自分を好きだという自信がなかった。俺は割と早く自分から告白するタイプだったが、それは相手が自分に粗方好意があると分かっている場合だ。彼女はわからない。勝率が低い段階で手は出せない。もっと核心が欲しい。そんな臆病な気持ちが告白すると言う行為を躊躇わせていた。彼女の髪型が自分の好みであるうちは安心できた。だから毎朝、彼女の髪型が変わってないことを確認してはほっと胸を撫で下ろす、そんな毎日を送っていた。
朝晩が寒くなり出した10月上旬の朝、手をこすりながら教室へ入り、いつもの癖で彼女の席を確認する。
瞬間、絶望。
窓際のいつもの席に座っていたのは、黒髪から明るい髪色に変えて、長かった髪の毛をバッサリとボブに切った彼女だった。


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『俺、好きな子出来たら自分から告るタイプなんだよね』

そう言っていた彼は、私の前の席の人だ。プリントを回す時しっかりと振り向いて目を合わせて渡してくれる律儀さや、私が困った顔をしていると大丈夫?と腰を屈めて覗き込んでくれる優しい所に惹かれて気がついたら好きになっていた。
彼の幼馴染にアイスを奢って、黒髪のロングヘアが好きだと言う情報を得て、すぐに実行に移す。前々から好きな人のタイプに寄せると言いまくっていたから私が彼を好きだと言う噂はすぐに広まった。もしかしたら彼の耳にも届いてしまっているだろうか。好きだと気づいてから変に緊張してしまって目を合わせられなくなった。私を覗き込む彼の顔も見れない。プリントを回してくれる時だって目線をずらしたまま手だけで受け取った。恥ずかしい。彼の近くにいるだけでバクバクと脈打つ鼓動をバレたくなかったし、赤く染まる頬や耳も見られたくなかった。彼は好きな人ができたらすぐに告白するタイプだと言っていた。すぐっていつだろう。もうすぐ10月、私の誕生日がある。誕生日に彼が告白してくれなかったら、諦めよう、そう思った。

#すれ違い

10/19/2022, 1:51:52 PM