…ある山の麓にある、古い神社。月夜の晩に
そこへ行けば、"白鬼"に会えるらしい─
「…最近、学校でこんな噂が流れてるんだ」
そう話すのは、私の隣に座る少女…ルカ。
彼女の幼い頃に怪我を治してやると懐かれて、私によく会いに来てくれるようなったのだ。
『へぇ、そうなのね。』
私が何気なく答えると、ルカは不安そうな表情でこちらを見る。
「…何も聞かないの?」
『どうして?』
首を傾げて言うと、彼女は暗い顔で俯く。
「どうしてって…私がその噂を流したかもしれないじゃん。」
『あら、そうなの?』
そう問うと、彼女は俯いたままフルフルと首を横に振った。
ルカは、私の前では絶対に嘘をつかない。
「…もう、会わない方がいいのかな。」
…ルカにとってはかなり辛い提案だろうに、
そう話す彼女は強く、優しい。
私は静かに微笑み、立ち上がる。
『…ルカ、顔を上げて。』
「…?」
『ほら…こんなにいい月夜なのに、独りぼっちで眺めるのは少し寂しいわ。』
私の言葉に、ルカは少し安心した様に微笑む。
「……うん、そうだね。」
…そんなルカを優しい瞳で見つめる彼女の
額には、二本のツノ。
彼女の純白の髪は風に揺れ、月の光を透かして淡く輝いていた。
〈月夜〉
3/7/2024, 4:32:36 PM