そら豆

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「あなたがいなきゃできないの。」
シンガーソングライターの真雪は幼馴染の健に頼む。
「なんでおれに言うんだよ?」
建は、真雪に聞く。真雪は少し言葉に詰まる。
「だって、そのあなたが言ってくれたじゃん。あたしにできるって。」
「あれはな、別に俺を誘えなんて意味では…」
真雪は声が大きくなる。
「でも、あたしに音楽を教えてくれたのはあなたじゃないの。あたし建がいなきゃこの道になんて進んでない。」
真雪は続ける。
「何か足りないの。恋の歌でもあたし一人じゃ完成してない。」
「どうしろっていうんだよ。俺が歌えって言うのか?」
建は少し顔をしかめる。歌ったのなんて何年前のことだろうか。お前と一緒にからおけにいったのは。なんでこんなに必死なのだろうか。確かに、才能があるといったのは俺だ。音楽を教えたのも俺だ。あいつ弱気だから自分で決めれないと思って背中を押した。確かに一度は夢を見た。歌手になってやろうって。でも、思ったより単純ではなかった。大きな壁にぶつかり挫折した。もう音楽は諦めようと違う道を歩んだ。なのにこいつは、
「あなたこそ、夢を見てたでしょ。ステージに立って歌う夢を。なんで諦めたのよ。歌詞も曲も良かったのに。あたしの曲なんてあなたに届かないんだから。」
真雪は下を向く。目には薄く涙が浮かんでいる。
建はどうしたらいいのかわからなくなり、たちつくす。
「この曲を聴いて。何か足りないの。歌詞と曲はいい感じなんだけどね。寄り添ってくれる歌声がほしい。追いかけて背中を押してくれる声がほしい。一人じゃないって伝えたいけど、一人じゃ何か違うの。だから、だから建に助けてほしい。」
何処かで聞いたことのある歌詞。
(どうしたらいいのか分からなくなってしまった
一人じゃ不安です一歩すら踏み出せずうずくまってる
その時不意に掛けられた優しい声
あなたならできると言ってくれた
そんな君の声でいまの私がある
胸張って高々に歌えるのはきっと君のおかげ
うまく自分見つけられた私だから言える
君が明るい未来を紡いでくれた大切な人)
俺のことか?建は頭をかしげる。
「なぁ、これってお前のことか?」
「あなたに助けられたあの頃のあたし。今でも弱虫なのは変わらないけど、いつも感謝してる。だからさ、
優しい声で追いかけるパートやってくれない?もう一度背中を押して。」
「ったくしょうがねぇな。やってやるよ。」
真雪と建はレコーディングを始めた。
そして、その曲は破竹の勢いで売れ、数々のランキングを取った。
「建、ありがとう。やっぱり頼んでよかった。」
「別になんもしてない。」
建は照れくさそうに答える。
「ねぇ、あたしと組まない?」
真雪は、建に聞く。
「どうしたんだよ?」
「せっかく、再会したし、この前の曲も成功したじゃん。だからその、」
真雪は覚悟を決める。
「あたしと付き合って。」
「なっ…」
急な告白に建は顔が赤くなる。
「あの頃からやっぱり気になってて、きゅうになるけと、返事をください。」
建はゆっくり口を開ける。
「いいぜ…アーティストとしてもカップルとしてもずっと一緒にいる。」
「ありがとう。」
あの頃支えてくれた君、歌へと紡いてくれたこと、そしてあたしと紡いてくれたこととても感謝しています。
どうか、末永くお付き合いお願いします。

きみが紡いてくれた歌

10/19/2025, 1:54:12 PM