白眼野 りゅー

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「一つ約束してほしいの」

 なんて君が言うから何事かと身構えた。

「私とした約束は、絶対に守るって」

 なんて、頓狂なことを言われた。


【世界とだって、約束だよ】


「……なんかそれ、『願い事を一つ言え』って言われて、『願い事を全部叶えて』ってお願いする人みたいだね」
「そうだよ。私は強欲なんだ」
「そんな堂々と……」
「ねえお願い、この一つだけ守ってくれればいいからさあ」
「実質的に無限個なんだよな……」

 でも、なかなか可愛らしいことを言うなあとも思ってしまうのは、僕が彼女を好きすぎるせいかな。

「いいけど、代わりに僕とも一つだけ約束してよ」
「いいよ、なあに?」
「これからの日々、僕とたくさんの約束を紡いでほしい」

 それは、僕と君がずっと約束を紡げるような関係でありますように、という願いに等しかった。君がその意図に気づいたかどうかは分からないが、

「当たり前でしょ。せっかく無限約束チケットを手に入れたんだから、たくさん使わなきゃ損だよ」

 なんて、気の抜けるような答えが返ってきた。

「そんなサブスクみたいなノリなんだ……」

 と脱力する僕の手を取った君は、自らの小指を僕のものと絡めた。

「じゃあ、お互いに約束だね。指切りげんまん、嘘ついたら……」

 この世界に指はない。だから、世界は僕と君の未来を、永遠を約束してはくれない。

 だからこそ君と、指を切る。君との約束は、そのまま世界への願いだった。

6/3/2025, 11:46:42 PM