久住弥生

Open App

コンビニで買った弁当を小さなテーブルで1人食べながら、「友達リスト」を下に下にとスワイプする。
ほとんどが高校の知り合いからで、その数も多くはない。
母は転勤族で、小さい頃は各地を転々としていた。2年住めば長い方。高校は転校したくないと、以降は、喫茶店を営む叔父夫婦の家に居候させてもらった。
その後も続いた引越しの中で、卒業アルバムの類は紛失してしまったらしい。そうでなかったとしても、多分今後も見返すことはなかっただろうけど。

遠足で行った動物園、学校帰りによく立ち寄った駄菓子屋、それがどこだったのか、いつのことか、思い出せないのは疲れて眠いからだろうか。

今思えば、どの場所でもそれなりに楽しくすごしていた。
でも、一番楽しかったのは、やっぱり高校だったな。
あの頃、最も長く時間を過ごした、彼の名を、そっとタップした。
機種変更をしたから、当時のやり取りは全て消えてしまった。
卒業してから、一度も連絡をしていない。
今更、何を言えばいいのか。

スマホを置いて、忘れていた食事を再開する。
彼は私にとっては、1番の親友だった。
その言葉を、お茶と一緒に飲み込んだ。


「友達の思い出」

7/6/2023, 12:28:45 PM