きゅうり

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「たまには、こんな日があってもいいよね。」

今日、一日を振り返って、言い訳するように呟いた。
別に悪いことをした訳じゃないけど、なにもしなかった日には無意識に罪悪感が募るものだ。

時間をただただ浪費したみたいで少し後悔があった。
取るに足らないほどの感情だったけど、言い訳がわりの独り言ぐらいは言っとかないと、不満が喉に突っかかる気がして何となく不快だったのだ。

「別に、たまにでもしょっちゅうにでも、こういう日過ごしてもいんじゃないの。」

独り言のつもりだったけど、ルームメイトの彼女はご丁寧に返事をしてくれたらしい。
スマホから目線を外すことはしなかったけど。
冷たいのか優しいのかはっきりしないやつだな。

「別にいいんだろうけどさ。なんか、罪悪感湧かない?」

「いや?いつも私ら息してるだけで頑張ってるからいんじゃない。」

「確かに…。一理あるわ。」

「だろ。」

「うん。やっぱあんたと友達やってて正解だわ。」

「なに急に、キモイな。」

「……前言撤回。友達やめるかウチら。」

褒めてやってんのにキモイとは何事だこいつ。ムカつくな。

「別にそれでもいいよ。あたしが出ていくことなって、家賃折半する相手いなくなってもいーならね。」

さっきまで、こっちの方見なかったくせに、片方の口の端だけ上げて意地悪く笑う顔は心底憎たらしい。

ほんと、人のこと揶揄うの好きだな。

憎たらしいけど、軽口を言い合える彼女との関係が嫌いなわけではない。
さっき言った友達になってよかったって言うとこも本音だ。

恥ずいから、真剣には面と向かって言ってやんないけど。

「まじうざいお前。」

口論では勝てそうにないから、不満だけは言っておく。

「んな事言っても、好きなくせに。」

「黙れ、喋んな。」


口から出る言葉はほとんど悪態に近いけれど、やっぱり、私のしょうもない独り言を拾って肯定してくれる彼女と友人になれたことが良かったと思ってしまう。

やっぱこいつのこと人として好きだな、なんてことに気づいてしまう、少し悔しい、そんな一日の終わりだった。


―――親友

お題【たまには】

3/5/2024, 4:09:40 PM