名無し

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開けないLINE

大会が近くなって忙しくなる部活。
君と話す時間も少なくなっていった。
大会の1週間前、久しぶりに会った君は呟くように
「私彼女なのにさ」と零し始めた。
そんな些細な事に、
「俺、部活で忙しいって言ってるだろ。」と大会のことでむしゃくしゃしていた俺は普段なら謝って済むところを突っかかってしまった。
それに負けじと「部活ってそんなに大事なの?」と言い返す君に、俺は「何もわかんない奴が口出しするなよ」、そう冷たく突き放ってしまった。
彼女は涙ぐみながら「もういい」そう言って走り去って行った。
それを俺は追いかけず、そのまま話さないまま時は過ぎた。
ある日ピロンッと通知が来て、その通知は彼女からだった。
前の事を謝りもせず引きずっていた俺は、その通知は開かなかった。
全部、大会が終わったあと謝ればいい、そう思っていた。
大会前夜、部活の仲間達との打ち上げで集まっていた仲間達を後にした俺は、彼女の姿を目にした。
声を掛けようとした手前、
彼女と仲よさげに腕を組む男がいた、
それは「たかが部活」、そう言い残して勝手に退部して行った元チームメイトだった。
そいつはレギュラーで、そいつの穴埋めに皆必死だった。
主将の俺がしっかりしなければならないのに、俺はそいつを引き留めようともしなかった。
3年間地区止まりだったのにやっとの思いで進めた県大会。何より高校最後の県大会。
今まで卒業していった先輩達のように、泣いて悔いを残したまま卒業なんてしたくはなかった。
だが、3年なんて普通ならもう引退時期。
周りにも進学の事で言われてもいた。
「たかが部活」そう言い放ったアイツに、共感する部分は確かにあった。
だからこそ引き止められなかった。
そういえば、と呆気に取られていた俺は携帯を取り出し君から届いていたメールを見る。
そこには単調に、ただ冷酷に
「別れよう」
その一言だった。
俺が部活に熱心になっていなければ、
俺が潔く部活を辞めていたら、
こんなことにはならなかったのか?
そう思ったまま、前を歩く彼女に声をかける気力は湧いてこなかった。

大会の結果は、想像がつくだろう。

9/1/2024, 7:59:55 PM