黄身

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海の色は空の色を写す鏡だと、聞いたことがある。
割れるような晴天では青に、垂れ落ちるような曇天では灰に、そして、すべてを呑み込む夜の闇の中では黒になるらしい。
それを知ったとき、ああ海は空に恋をしているのだと思った。届かないと分かりきった恋を、ただその深みに隠して生きているのだ。どんなにか苦しい恋だろう。どんなにか大きな痛みだろう。
己の身にさかなたちや、海藻や、貝やさまざまな命を抱えた母のような大きな海が、ただ広くずっとそこにあり続け、万物に恵みを与える寛大で自由な空に恋をしている。
美しい恋だと思った。苦しい恋だと思った。こんな恋を、してみたかった。


No.11【夜の海】

8/15/2024, 3:12:11 PM