題:手が触れて
(今日は何か良いことが起こる予感……!)
私は朝起きて、そう感じた。
✧ ✧ ✧
今日はマリオカートの大会が行われる日。私は鍛錬を怠ることなくしてきた。
勝てるはず。
そう思いながら会場へと向かう。
「あ、ロゼッタ!」
「ピーチさん」
「大会、楽しみましょうね!」
「はい」
会場に着くと、ピーチさんが挨拶をしてくれた。
初めてマリオカートに加わってからぼっち気味だった私に一番最初に話しかけてくれたのが、ピーチさん。それからずっと仲良くしてる。
「お、リンク!」
「!ピーチさん、おはようございます!ロゼッタさんも」
「お、おはようございます……」
そして、自分で言うのもあれなのですがーー私はリンクさんのことが好き。だから、話しかけられるとドキッとしてしまう。
ピーチさんが肘で私を小突いて、小声で話し掛けてきた。
「ね、ね、大好きな彼が来たわよ?」
「恥ずかしいのでやめてください……」
「?どうされたんですか?ロゼッタさん、若干顔が赤く見えるのですが……」
「あ、いいえ、何でもありません!うん、何でも……」
「そう、ですか……。何かあれば俺に言ってください」
「はい……」
ドキドキする〜!!前までは何の苦もなく喋れてたのに……。好きな人と話すって難易度高い……!
またピーチさんがニヤニヤしながら小突いてくるし!私必死なんですよ!
『間もなく大会が始まります。選手は速やかに持ち場についてください。繰り返します……』
タイミングばっちり(?)!私はこの今にも爆発してしまいそうな状況から解放される……!
✧ ✧ ✧
「3、2、1、START!」
スタートダッシュを決めていきなり1位に躍り出る。
そんな私の後ろにいるのが……リンクさんだ。
(めっっっちゃ恥ずい!!でも何か嬉しい!!)
心の中でパニックになっている私だけど、このまま1位を維持するために走行する。
て、嘘!リンクさんキノコ使ったんだが!?
(隣いる〜!)
きっと後ろのピーチさんはニヤニヤしてそれはそれは気持ちの悪い顔をしているんだろう。安易に想像できる。
(ヤバ、ぶつかりそう……)
ハンドルを左にして遠ざかろうとする直前……。
リンクさんの手が、私の手に触れた。
(………え、今手触れた?嘘?ヤバいパニックになりそう)
既にパニックになっている中、リンクさんの方を見ると……。
こっちを見て柔らかく微笑んでたっ!!
(破壊力っ!!)
リンクさんの柔らかな微笑みに気を取られて減速してしまった。
リンクさんと順位が変わり、私が2位になる。
今までに体験したことのない気持ちがなだれ込んできた。
(マジで良いことあった……)
大会終了後、部屋に戻った私は、触れた手をずっと触っていた。
お題『予感』
10/21/2025, 11:29:06 AM