『可哀想な方ですね。』
そんな目で、俺を見るな。
「何故こんな事をした?」
裁判官が俺に聞く。スラム街で育ち、早くから犯罪に手を染めた俺。次第に、強盗や暴行にも慣れ始めた。もっとスリルを。もっと快感を。気付いた時には俺は、この街に名を轟かせる殺し屋になっていた。
「ただ優越感に沈りたかっただけさ。」
俺が言うと、誰もが異物を見るような目で見た。あぁ、たまらない。お前達のその表情が、より俺の存在を上げてくれる。もっと俺を楽しませてくれ。俺は自分の命が消える瞬間まで、そう叫んでいた。
ここはどこだ?真っ暗なだけで何も無い。俺は確か死んだはず。じゃあここは、死者の国なのか?
『ここは地獄ですよ。』
何者かが言う。誰だこいつ?それに地獄だって?あり得ない。この俺が何故地獄なんかに居るんだ。
『おや、自分が何故ここにと言いたげですね。当然のことでしょう。貴方は大罪を起こしたのですから。』
罪?殺しが罪なのか?俺の世界では当たり前の事だった。
『親に禄に育てられてないのでしょう。可哀想な方ですね。そんな貴方にチャンスを与えましょう。』
おい、俺をそんな生易しい目で見るんじゃねー。惨めに見えるだろうが。
『おや、チャンスは不要ですか?折角、貴方のライバルになりゆる方が居るのに。』
ライバル?そいつは誰だ?そいつに勝てば俺は更に優越感に沈れるのか?
『さぁ、どうしますか?』
やってやる。俺にはこんな、惨めな姿は似合わない。俺が頷くと、何者かは不気味な笑みを浮かべた。
『ようこそ、生者の未来を記す図書館。生人図書館へ。』
さぁ、寄ってらっしゃい見てらっしゃい。見下してくるあいつの未来はどんなものか。優越感、劣等感、どちらが生まれても自己負担。今宵はどんな、喜劇を静観する?
7/13/2024, 3:09:06 PM