Ryu

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大学入学当時、オリエンテーションとして、どこぞの宿泊施設に一泊するというイベントがあった。
宿泊地も覚えていない。
そんな昔の出来事。

目的地に着き、班分けされ、私は16班に。
地方から上京して東京の大学に入学したてで、もちろんまだ知り合いの一人もいない。
とりあえず部屋に入り、同じ班の仲間と顔合わせする。
全部で、八人くらいいただろーか。
何となく、この大学生活は、きっとこのメンツとともに過ごしていくんだろーな、とボンヤリと思った。
そーゆー目的のオリエンテーションでもあっただろう。

得てして、こーゆーグループにはリーダー格が生まれる。
ちょっと小太りの饒舌な男。
少しタッパのあるガリガリ男。
見事なアンバランスのツートップ。
何をするにも、そいつらに相談するようなシステムが出来上がってくる。
おいおい、勘弁してくれよ。
中高生じゃないんだからさ、誰かに威張られるのはまっぴらごめんだよ。

そんな感じで始まった大学生活。
ツートップは何かと采配を振るってきた。
集合をかけたり、詮索してきたり。
次第にウザくなり始める。
もう、大学生なんて、半分大人みたいなもんだろ。
いつまでこんな、お山の大将気取りを続けるんだ。
バカバカしくなって、少し距離を置いた。
同時に、別のグループの人達と交流する機会があり、ウチのグループのような主従関係がまるでないことを知る。

付き合いを完全にシフトした。
仲間を鞍替えして、ツートップからの招集も無視した。
ある日、小太りに呼び出される。
そして、こう聞かれた。
「お前、16班抜けんのか?」
…呆れた。ここまで勘違い野郎だったとは。
きっと、地元の高校でも、こんな感じで幅を利かせてたんだろうな。
アホらしくて、「アホらしい」と答えてその場を離れた。
真面目に答えるのもアホらしくて。

それから、いろんな嫌がらせがあった。
でもまあ、別の仲間がいたから気にしなかったし、そいつらとの付き合いは今も続いている。
16班の連中の現在は知らない。誰一人。
イイ奴もいたんだけどな。
あの日以来、完全に背を向けてしまった。

誰かに強制的に集められた仲間と、うまくいく保証なんてない。
それは今の職場でも同じだ。
誰が悪いとかじゃなくて、単なる考え方の相違で衝突してしまうことも。
だから、無理に仲間意識なんて持たない方がいいと思う。
仲間だからいつも一緒にいる、仲間だから互いの状況を把握する、仲間以外の人と仲良くするのは言語道断。
…付き合いきれない。人間はもともと独りなのに。

「お前、16班抜けんのか?」
このセリフが吐かれたあの日、私は仲間内にこそ敵がいることを知った。
その名のもとに、こちらの自由を奪い、自己満足のために他人を支配しようとする魔物がいることを。

12/10/2024, 1:27:56 PM