300字小説
さよならの景色
何の変哲もない田舎のローカル線だと思っていた。
「明日からはバス通学か……」
いつもの時間の車両に乗り、いつも座る窓際の席に座る。
「……ん?」
季節の移ろい以外変わらない、窓から見える景色が変わっていく。
山が開かれ、橋が掛かる。家が増え、町が出来る。更に家が増え、店が建ち……。
やがて、灯りのつかない家が増え、店が消える。町から人が消えていく。そして……。
この路線の沿線の、時の流れと共に変わっていった景色だろうか。
気がつくと、いつも降りる駅。無人の改札には、明日からの廃線を告げる掲示板と誰が置いたのか、花束が吹き込む秋風に揺れている。
駅舎を出る。屋根の向こうは夕暮れ空。赤く染まった雲が潤んで見えた。
お題「窓から見える景色」
9/25/2023, 12:03:28 PM