かたいなか

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凍える朝、寒い夜明けには、温かいブランケットを肩からかけて膝にも置いて、ホットココアやホットカフェラテでも1杯、飲みましょう。
スマホの週間天気予報で、都心と奥多摩の気温差に「なるほど凍える朝」と思う物書きです。
今回は雪国を舞台に、こんなおはなしをご用意。

最近最近の雪国某所、某キャンピングカー乗り入れ可能なキャンプ場で、
ちょっとだけ風も強いようですが、カッと絵画的な朝焼けが、木々に強烈な光を当てて、
そして、日の出の光とキャンプ場内の影の、絵画的コントラストを作り出しておりました。

お題のとおり、凍える朝です。
標高のせいか、北緯のせいか、そもそも東京に比べれば雪国は全部寒い気もしますが、
草は朝露に濡れて、小鳥たちは早起き。
チィ!チィ! ピチチッピチチッ!
キャンパーたちはそれぞれのテントの近くで、写真を撮ったり、鳥を観察したり、
あるいは、静かにコーヒー用の湯を沸かしたり。
思い思いに、過ごしておりました。

今回のお題回収役、ドワーフホトと稲荷子狐も、雪国キャンプで凍える朝を絶賛堪能中。
風よけを使い、焚き火台の上にケトルを置いて、
ぽこぽこ、コトコト、ぽこぽこ、コトコト。
カフェラテのためのお湯を、沸かしていました。

「さぁコンちゃん、次のごちそう、なぁにかなー」
ドワーフホトのお嬢さんは、膝にぽかぽかブランケットを被せて、その上に稲荷の子狐を乗せて、
ぱらり、道中で買った絵本を読み聞かせ。
朝食の準備ができるまで、国語のお勉強です。

絵本のタイトルは『ゆきぐに おいしいな』。
子供の食育を目的に描かれた絵本のようです。

「おでん!」
見開きで描かれた土鍋と大根、ニンジンにロールキャベツ、手羽元チキン等々等々に、
コンコン子狐、尻尾をぶんぶん、ビタンビタン!
「せっちゅやさい、だいこん、にんじん」
ひらがなと、カタカナと、それから漢字にふられたルビの読み仮名を、子狐、ゆっくり読みます。

「『雪中野菜は、甘味がぎっしり!』
甘味ぎっしりだってー。どんな味だろねぇ」
ドワーフホトはケトルを確認しつつ本を読みます。
「『冬の中、雪のお布団にくるまって、ねんねしながら甘味を育てた野菜たち。めしあがれ!』
コンちゃんは、どのお野菜、好きかなぁ?」

雪のお布団。雪のお布団だって。
雪だから凍えるだろうに、お布団って聞くとなんだか、あったかそうに感じるねぇ。
ドワーフホトのお嬢さんは、膝の上で瞳をキラキラ輝かせる稲荷子狐の頭を、背中を、ポムポム。
軽く、撫でてやります。

振り返る子狐はやっぱり、目がキラキラ。
そして、自信たっぷりに、言いました。
「和牛」
せっちゅうやさい、「雪中野菜」はうまく言えなかった子狐ですが、和牛はハッキリ、発話しました。

ドワーフホトは目が点々。
凍える朝の温度感を、数秒、忘れましたとさ。

「コンちゃん、和牛、お野菜じゃないよぉ」
「わぎゅう、和牛。キツネ、和牛だいすき」
「和牛はお肉だよ、コンちゃん」
「和牛。ここ。かいてる。これ、わぎゅーくし。
和牛串キツネ分かる。キツネ和牛串しってる」
「コンちゃぁん……」

凍える朝がお題のおはなしでした。
おしまい、おしまい。

11/2/2025, 3:55:16 AM