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 台風が過ぎて、雲が消え去った。空は青く、どこまでも飛んでいけそうだ。おれは翼を広げて、空へ発つ。
「あにき、知ってるか。人間の言葉で、秋の晴天は秋晴れっていうらしいぜ。」
 後ろを飛ぶ弟が言った。
「あきばれ?秋ってなんだ。」
「秋って今のことさ。」
「秋ってのは、台風の後のことか?」
「きっとそうさ。そして、その時の空が秋晴れなんだ。」
「そうか。そりゃあ特別だ。言葉もできあがるわけだ。」
 おれは、真下をぐうんと見下ろしてやった。人間たちが不便な脚でちまちまと歩いてつくった、硬くて住み心地の悪そうな巣が、所狭しと並んでいる。
「人間、見てるか。今日は秋晴れだぞ。」
「そうだそうだ。こっちは広くて気持ちいいぞ。ああん、どいつもこいつも、上を見やがらねえ。」
「シゴト、で忙しいんだな。」
「ああ。たまには、空を見上げればいいのに。」
 人間は可哀想だな。地面に縛り付けられて。こっちを見ろよ。知らないだろ。空って、すごく綺麗なんだぜ。

10/18/2024, 11:10:14 AM