ふと、喉の渇きを感じた。
凝り固まった腕に不快感を覚えながら、ゆっくりと瞼を開ける。
どうやら机に突っ伏して寝ていたようだ。
ぼやけた視界をどうにかするため、ゴシゴシと目をこする。
すると、目の前に大きな黒板が見えた。
長方形の机とそれにつけられた椅子が、整然と並んでいる。
窓の外は陽は落ちて、薄暗かった。
教室のようだ。
それでここが夢なのだと知った。
学校なぞ、卒業して久しい。
「起きたんだ。」
声がした。
不思議なことに、それが彼女のものだとすぐにわかった。
最後に会ったのが何年前かもわからない、にも関わらずだ。
視界の隅でスカートが揺れる。
そこではじめてエアコンが効いていることがわかった。
肌をなぞる温風が、不思議な安心感を与えてくれる。
「おう。」
いつものように手を軽く振る。
降ろした手でそのまま頬杖をついた。
自分の手が、気持ちの悪いほど湿っているのがわかる。
「ねぇ、なんか話してよ。」
いつもみたいにさ。
彼女はそう言って斜め前に座る。
ちょうど私の手で見えない位置だった。
そういえば放課後、教室に残ってよく話した。
話したと言っても私が一方的に物語を語り、彼女はそれを頷きながら聞いていただけだったが。
「そうだな、例えば……こんなのはどうだ?」
お題:ただひとりの君へ
1/20/2025, 10:11:54 AM