怪々夢

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4/13 ラーメン
近所にあるのに何故か入り辛い飲食店、そんなお店ってありませんか?美味いとも不味いとも評判がない。こっちはいつ潰れるかと心配するけど、いつまでも残っているお店。俺にとってはそれがラーメン◯◯◯だ。その昔、歩いて5分の位置に新しいラーメン屋さんが出来た。俺の住む街は寂れている。飲食店はできては消え、できては消えを繰り返した。だがラーメン◯◯◯は、しっかり街に溶け込んだ。1回くらいは行ってみるかと思いつつ、10数年間そのチャンスは訪れなかった。しかし、今日、等々そのチャンスが訪れたのだ。いつもは選択肢の最後の方にランキングしているラーメン◯◯◯だが、普段行っていないお店に行きたいと言う好奇心と兎に角腹が減ったから適当に済ませるかと言う打算の力の融合によってランキング1位に躍り出たのだ。少し緊張しながら店の前に自転車を停める。店内に入ると常連らしい客2人と、気弱そうなおじさんの店主がいた。テレビではメジャーリーグのドジャース対パドレス戦をやっている。カウンターは学校の机の様に落書きが彫られている。これどうやってやったの?店主の目の前だよね?メニューを見てラーメン◯◯◯の生存戦略を理解した。ラーメン500円。安い。俺は550円の味噌ラーメンを注文した。運ばれてきた味噌ラーメンは実にシンプル。メンマとコーンとチャーシューがまばらに盛ってある。そしてなんと言う正直な味。そうだ。500円のラーメンに隠し味なんか必要ない。とにかく口に放り込め。常連らしい客は相次いで帰って行った。店主と過ごす2人きりの時間。その時チャンスが訪れた。大谷翔平が打席に立ったのだ。ホームランを放とうものなら盛り上がる事間違いない。俺はラーメンを平らげ、大谷翔平の打席に集中した。大谷のバットがボールを捉えた。ホームラン。とはいかなかったがライト線に運ぶ2塁打を放った。ありがとう大谷、それで十分だ。俺は会計に向かうと店主に話しかけた。
「それにしてもよく打ちますねぇ。」
「あ、ああ、そうですね、チャンスですから良かったらゆっくり見て行って下さい。」
「いや、良いもの見せて貰ったんで大丈夫です。」
店主との束の間の交流。もう2度と来ることはないが。

4/13/2024, 9:13:35 AM