『別れ際に』
飛行機が飛んで行く。
ずっと目で追っていたそれは、機体が水平になる頃にはすでに大きな雲の向こうへと消えてしまった。
38A
たしかチケットにはそう書いてあった。窓側の席だ。
なら、あの子にもちゃんと見えているのだろう。私たちの視界を隔ててしまった、この憎ましい白い雲が。
「ねぇ、今度________。」
別れ際、あの子はそう言った。
…………残酷だ。
「今度」がないかもしれないことを、……きっと誰も、あの子に知らせていないんだろう。
9/28/2024, 10:24:57 AM