死んだ人は星になるんだってね。
生前、煙草の煙をくゆらせながらそう嘯いていた彼女を信じて夜空を見上げてみた。が、星なんて一つも出ちゃいない。
やっぱり君は嘘つきだ。その場に唾を吐こうとして、夜の海岸沿いの道路にあまりに不似合いなものを見つけた。
くたびれた黒い煙草の空き箱を拾い上げる。彼女が愛飲していた銘柄だった。捨てられたのか、この辺りをよく飛び回っている鳥の落とし物か。
砂を払い、中身を確認すると一本だけ残っていた。海の潮風のせいでだいぶしけっている。もう火もろくに点かないだろう。
その傷んだ煙草を咥えてみた。潮の味に侵食された奥に本来の苦味と、鼻の奥から突き上げてくるようなしょっぱい味がする。
4/21/2025, 7:16:07 AM